Vol.471 新喜皮革さん①Itadaki-masu

 皆様こんばんは、絶賛閑職を楽しみ中の靴aholicです!本日はですね、兵庫県姫路市にある新喜皮革(しんきひかく)さんの工場を見学させて頂きました。あまりにも楽しくて、その雰囲気が少しでも皆様に伝わればと思い、早速記事を書いております!


本日のレジュメ

と言いながら、まずはB級

 先日行った我が家の近くの焼肉屋さん、本当に美味しくて早速リピートしました。今回は腹八分という大人の対応で、腹パンになる前に撤収したのでお会計もお手頃でハッピーでした。幼いころに習ったようにきちんと「いただきます!」と元気良く感謝して頂きました。


レザーフェスティバル2021

 さて、今回お邪魔したのは、私が何かのコネで特別に工場見学をさせて頂いた訳ではありません。兵庫県姫路市の日本屈指のコードバンタンナー新喜皮革(しんきひかく)さんが毎年開催して下さっているレザーフェスティバルに関西の愛好家数人と共に参加させていただいた次第であります。

新喜皮革とは…

1951年に創業した兵庫県姫路市の皮革製造工場(タンナー)。欧州から輸入した馬皮を、原皮から「コードバン」と「ホースハイド」になるまでの鞣し(なめし)から仕上げまでの工程を自社一貫で行っています。国内でコードバンを生産できるタンナーは数が限られていて、コードバン革製造の貴重な技術とノウハウを持つ日本が誇るべきタンナーです。

https://shinki-hikaku.jp/

 今回は工場見学をしてから、2021年7月にオープンしたpelleteria(ペレテリア)さんを見学させて頂きました。


朝から合流まで

 さて拙ブログの記事を過去にお読み下さった皆様はもうお分かりかと思いますが、真面目なブログとは言い切れず…どうしてもおちょけの関西色が出てしまいます。我が家の早起きのワンコに起こされ、無駄に5時半に起床し、早起きは三文の徳とばかりにのんびりと下道で姫路へと向かいました。

 愛好家仲間との集合は10:30にJR姫路駅。私は愛好家の皆様をお迎えすべく少し早めに家を出ましたが、意外と早く9:00に現地に到着。仕事柄、人と待ち合わせるときは早めに現地に着いてお茶をしてお出迎えするというのがクセになっていますが、本日は少し早すぎたかもしれません。星野珈琲店でフレンチトーストです。それを食べていると…グループDMが何やら騒がしい…

  そうです、遅刻魔の関西京都のカバちゃん(Instagram@advertise_1925)、京都のシャイナーさんの樺澤幹人さんではありません。ただの関西の革靴愛好家のカバちゃんの方です。京都からの参加にも関わらず9:00に起床したとのこと。「100㎞以上離れた姫路まで1.5時間でどないして来るねん!」と思いきや、流石に関西人の集まり、ガンガンに鋭い突込みが入ります。

 「新幹線で来い!」…そして乗換案内を調べると、新幹線とタクシーを駆使すればギリギリ11:00からの工場見学には間に合いそう!ということで、まさかまさかの新幹線&タクシーでのブルジョワ移動でわずか1.5時間で京都~姫路間を移動して工場見学へとこぎつけました!なんと片道の移動交通費は5,800円+タクシー代です。これには本日参加の愛好家全員が爆笑です。


Itadaki masu

 そんなこんなでワクワクドキドキの工場見学が始まります。

 そこでまず最初に説明があったのが、皮革についてですが、革の仕組みや製法のお話ではなく、左側の写真の②のお話でした。私たち人間がお肉を食べた副産物が「皮革」です

~ We should remember the fact that “LEATHER” is the by-product of meat we eat. ~

 現在ではコードバン革になる馬はほぼ全て食肉として屠畜された馬です。私も質問しましたが、農耕馬は現在、日本はもとより欧州でもその仕事が機械にとって替わっています。必然的に私たちが革製品として使用している大元は食肉として食べられた牛や馬の副産物として生み出されたものであり、私たちはそれを十分理解した上で有難く大切に利用するべきだと心に刺さりました。

~ We leather goods lovers must recognize the fact and handle them carefully with love. ~

 正にこのお話を私たち素人に一番初めにされたことは、皮革業界の方々は強く「(大切なお命を)いただきます」の思いを持っていらっしゃるでしょうし、伝えるべく真実だと思いました。

~ Itadaki masu is a word that makes us realize we can live by receiving lives of such animals. ~


コードバンとは?

 馬の革は大きくコードバンホースハイドの2部分に分かれます。

 馬の胴体部分の革は薄くしなやかでホースハイドと呼ばれ、馬のお尻の部分をコードバンと呼びます。1枚目の写真で分厚さの違いが分かるかと思います。コードバンは牛革と比べても数倍強い強度があり、ホースハイドの部分と比べ、1頭の馬から取れる量が少なく貴重です。下の写真の赤丸の部分がコードバンとして使用できる部分です。

 上の写真の真ん中の黄色の部分はザラザラしていて、コードバンとしては使用できないそう。コードバンのタンニン鞣しは約10か月の期間をかけて鞣され、さらに使用できる部分が少ないため、それゆえ貴重な革とされ、その輝き方と共に革の宝石とも呼ばれています。


原皮から鞣しへ(閲覧注意)

 さて、上記を理解した上でいよいよ工場見学へと入っていきます。まず案内されたのは第一工場。ここでは原皮をピット槽でタンニン鞣しをしているところまで見ることが出来ました。「鞣す(なめす)」は文字通り「」に「」と書き、皮をしなやかで丈夫に、そして腐敗しないように加工をし、「革」にすることです。

 塩で漬けた原皮を植物のタンニンで鞣していく工程です。タンニンで鞣すと皆さんが頭に浮かべるヌメ革の様な薄茶色の革になります。革の分子との結合力が強い金属化合物のクロムを使った鞣しと比べると、使えば使うほどエイジングする、曰く天然の革らしい風合いをより楽しむことが出来る皮革になります。

 先ほどの話を繰り返しますが、原皮の写真には毛や尻尾ととれる元の姿が見て取れます。本当に私たちが以下の動物の生命を頂戴して生かされているのかが、身に染みて理解出来ます。


第2工場へ

 さて、場所を移して第2工場へ移動しました。ここでは鞣しの続きと染色を行っている様でした。

 大きなドラムが6つ?小さなドラムがひとつあり、ここで先ほどの鞣しの続きと染色を行っています。2枚目と3枚目の写真のほぼ白色ともいえる色の革に、4枚目の写真のカラーチャートの色を入れて様々な色味のコードバン革を作っていきます。色の調節はある程度自由自在にできる様で、日本のモノ造りの技術力の高さが垣間見えます。

 ちなみに少し小さいですがカラーチャートが各色3つのグラデーションがセットになっているように見えるかと思いますが、その3つセットの真ん中の色は左右と比べると発色が良いように見えます。

 実はクロム鞣しをするとこのような発色の良い革を作ることが出来るようで、タンニン鞣しの革と比べると発色が良く、色の変化や劣化がしにくいとのことでした。エイジングを楽しみたいならタンニン鞣し、元の状態をなるべく保ちたいならクロム鞣しの革という選択も有りかもしれません。


いよいよコードバン革へ

 さて最後にお邪魔したのは、グレージングの作業をしている工程です。

 コードバン革は馬のお尻の革の体内側のスエード面を取り除いたものになります。豆知識ですが、シマウマはコードバン層がお尻の部分だけではなく背中の一部の方にまで広がっているそうです。ワシントン条約で革として取り扱うことが出来ないらしく、革愛好家としては惜しい思いもあります。

 恐らく革靴愛好家の皆様はコードバンのお靴を磨く際、皺の部分など白く毛羽立った部分をアヴィレザースティックなど滑らかなものでこすって毛羽立ちを寝かせた経験がおありではないでしょうか?

 グレージングという作業ですが、英単語の“graze”「~をかすめる・すりむく」という意味です。その作業はコードバン製造でも行われ、その作業を施していないものを「素仕上げ(unfinished)コードバン」と言ったりもします。

 新喜皮革さんでは私たちでいうところのアヴィレザースティックはこちらの大きなガラス棒になります。この作業は見ていて圧巻です。次の動画をご覧ください!

 いかがですか?あっという間に革に強い光沢が出ます!これがグレージングの作業で今回の超見所です。ちなみにグレージングの工程が終わった後の革は…

 このようにして私たちが目にするコードバンが完成していきます。こちらの新喜皮革さんでは月間2,000頭ほどのペースでコードバンの生産をしているらしく、その計算でいくと工場内にはおおよそ20,000頭分のコードバンがその製造工程にあるということになります。希少な革ながらさすが国内の最大手タンナーということが出来るかと思います。

 10か月もの期間を掛けて鞣し、加脂、グレージングなど多数の職人技を経て私たちの生活に利用できる革が完成します。ご説明の最後で、新喜皮革さんはこういったコードバン革の生産技術やノウハウを後世に伝えていくべく、誇りと使命を持ってお仕事をされていると仰っていました。


まとめ

 今回の見学を通じて、大変勉強になりました。まずは私たち素人愛好家が革について勉強するチャンスを快く与えてくださる新喜皮革の社員様に感謝申し上げたいと思います。

 やはり今日の一日は1話完結は不可能でした、次回の靴aholicさんは「西岡ペコさんとの初対面」「靴aholic散財する」「鹿男あらわる!」の3本です。それではまた来週も観て下さいね!(どこかで聞いたような…)ということで、また次回きちんとちょけますのでお楽しみにしておいて下さい!


次回以降の記事予定

  • お靴体重別選手権
  • Tricotさん2足買い②
  • 黒ストチ
  • フランスのC
  • 新喜皮革さん工場見学(7月)

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